マダガスカルに到着し、今回の僕の旅をサポートしてくれるガイドと会い、
簡単な自己紹介の後で、ガイドが僕に『今回の旅で、アフリカへの旅は何度目か?』と訊ねてきた。
以前にエジプトへ行ったことがあると伝えると、『エジプトはアフリカなんかではないです。』と即答で衝撃的な返答。
だが、ガイドの言う事実を、僕はすぐに飲み込むことになる。
見渡す限りの荒涼とした砂漠の大地と、そのキャンバスを点々と彩る緑。
厳しくもあり豊かでもある自然。
そこに棲む多種多様な動植物や、自給自足の暮らしを営む人々。
その大地を昼間は燦々と照らし、やがて真っ赤に染め、そして沈んでいく太陽。
日本よりやや大きく、アフリカ大陸に寄り添う島で、本当のアフリカの情景と出逢った。
微かな轍の残る砂漠を指差し、ガイドがまたも衝撃的な事実を僕に告げる。
『バオバブへは、この国道9号線で行く』と・・・・。
マダガスカルでは、大きな街とその近郊を除けば、ほとんどが未舗装の道なのだという。
マダガスカル南部の玄関口であるトゥリアーラからは、途中1泊を挟み、片道おおよそ7時間の遠く険しい道のり。
相棒となったTOYOTAのランドクルーザーは、幾度となく砂に足を取られ、
エンジンは激しい雄叫びをあげながら、僕を乗せてバオバブの樹へとひた走っていった。
【写真:左】コレが噂のマダガスカル国道9号線
【写真:中】国道ではない幹線道路はさらに砂に埋もれている・・・・
【写真:右】車が砂に足を取られることもしばしば・・・・
バオバブを目指す道のりのところどころに小さな集落がある。
漁業や農業、あるいは放牧などで自給自足の生活を営んでいる。
とても厳しい環境であるにも関わらず、僕らの車へ向かって手を振る
子供たちの笑顔に癒されながら、車はバオバブへと進んで行く。
【写真:左】ホワイトサンドの砂漠が印象的な海沿いの集落
【写真:中】赤色砂漠の集落を夕陽がさらに赤く染める
【写真:右】子供たちは好奇心旺盛で、車を見付けると駆け寄って来る
バオバブを目指して2日目、前の日の晩に宿泊したサラリーベイというところからは、おおよそ1時間30分ほど
車にゆられただろうか、砂漠のとある小高い丘を登りきり、一気に視界が開けたところで、バオバブは姿を現した。
車はバオバブの立つ平原へと、緩やかな下り坂を激しく下っていく。
平原の真ん中で停車し、車を降りると、そばでは放牧された牛たちがのんびりと食事をしている。
見渡せば、無数のバオバブの樹々。
向かう足は徐々に早くなり、そして駆け出していく。
僕のはやる気持ちを抑えるかのように、平原にある牛たちの落し物を踏まないように
気を配りながら、ようやく、バオバブとの出逢いを果たしたのだった。
【写真:左】THEマダガスカル バオバブのある光景
【写真:中】雲ひとつない青空と、無数のバオバブの光景は圧巻
【写真:右】とにかく“デカい”・・・・ 極太のバオバブ
やっぱり“デカい”・・・・。
年齢不詳のバオバブ。年輪を持たないことから、正確な樹齢は理解らないそうだが、
おおよそ500~1,200年という、想像を絶するほどの長い時を経て、今も大地に根ざしているのだという。
最初はその神々しさに圧倒されながら、でも、静かにたたずんで、時間がゆっくりと刻まれていく
辺りの雰囲気に次第に慣れてきたら、バオバブの樹登りに挑戦してみたりもして。
世界でも、マダガスカルでしか体験出来ない貴重なひととき。
【写真:左】ちんけな僕がさらにちんけに見える
【写真:中,右】ソコにバオバブがあるなら・・・・
映画『マダガスカル』シリーズにもあるように、日本のおおよそ1.5倍ほどある、島と呼ぶには少し大き過ぎるマダガスカルには、独自の進化を遂げた珍しい動物たちがたくさん棲んでいる。
そんな動物たちとのふれあいは、マダガスカルにいくつかある国立公園でのサファリがお薦めだが、アクセスが悪かったり、懐の深い自然の中での探索だったりと、時間をかけなければならないのが難点・・・・。
キレイな海,ビーチリゾート,そしてバオバブなど、たくさんのマダガスカルの魅力と一緒に、
限られた時間の中で動物たちとのふれあいも楽しむなら、ということでお薦めの場所がある。
それは、マダガスカルの首都、アンタナナリヴから車で30分~1時間ほどのところにあるレミュールパーク。
特にサルが好き、あるいはそれほどでも・・・・という場合でも、お薦めのスポット。
【写真】横っ飛びジャンプでお馴染みのシファカ。とにかく手足が長い
まず、マダガスカルの旅の拠点となる、首都のアンタナナリヴという街をご紹介。
マダガスカル国内の移動は空路が基本だが、ドコへ行くにしても、ほぼすべてのルートが、首都のアンタナナリヴを経由することとなる。
ただ、旅の予習をするには、この街の情報は非常に乏しく、イメージも膨らまないまま、
まるで放り出されたかのような到着だったのだが、車で街をまわるにつれて、
この街がどれだけ素敵な街なのか、また、それだけになぜ残念なのかが伝わってきた。
【写真】見晴らしの良い高台から、アンタナナリヴの街を一望
アンタナナリヴという街をひとことで表すなら“可愛らしい”街。
フランスの植民地だったという歴史を経て今に至るこの街は、ドコかしらヨーロッパの雰囲気が漂う。
街の中心である独立大通り周辺は、すり鉢状の地形をした街の底にあって、
この辺りの建物は、オレンジ色のとんがり屋根に重厚感のある外観が印象的な、
コロニアル建築の建物が並ぶ。
街の中心から辺りを見渡せば、なだらかな傾斜に、レンガ造りの民家がびっしりと貼り付くようにして建っている。
外壁は原色やビビッドなカラーが施されている。
この鮮やかな色合いがアフリカらしくて心が高鳴る。
春になれば、ジャカランダの花が咲き乱れ、このカラフルな待ちに、さらに美しい紫の色を足す。
【写真:左】独立広場から街の中心へ続く階段は、多くの人が行き交う
【写真:中】道の両側にはたくさんの露天商が並び画期的な雰囲気
【写真:右】美しい紫色の花が咲くジャカランダは10月頃に満開となる
今でも残る狭い石畳の路地裏を、昭和の名車“ちっちゃくてレトロ”のビートルやシトロエンたちが、
排気ガスを撒き散らしながら、頑張って坂道を駆け上がって行く。
時間が許す限り、アンタナナリヴの待ちを歩きたい。
ところなのだが、この街は今のところ、治安があまりよろしくない・・・・。
地元の人たちでさえ、スリやひったくりに遭わないように気をつけているのだとか。
ただ・・・・。アンタナナリヴの街は一見の価値あり。
この街に降り立ったなら、ガイドと一緒に街歩きをしてみてください。
【写真:左】たまご色で統一されたタクシーはレトロでカワイイ車が多い
【写真:中】とんがり屋根の土産物屋街は1kmに渡って軒を連ねている
【写真:右】ハンドメイド感たっぷりのワオキツネザルの置き物
レミュールパークは首都のアンタナナリヴから、車でおおよそ30分~1時間程度の郊外にある。
また、ずいぶんとアバウトな所要時間なのだが、これは、アンタナナリヴの交通事情が大きく影響している。
もともと車の量が多いうえに、いまだに人力車なるものが、車と同じ道を走っている。
渋滞の先頭が人力車・・・・。ということもしばしば。
まぁ、心にゆとりを持つしかない。
レミュールパークは可愛らしいワオキツネザルの顔写真の看板が目印。
【写真:右】レミュールパークのエントランス
【写真:中】暑いお昼は木の上でひとやすみ。ワオキツネザルの群れ
【写真:右】やっぱり“カワイイ”ワオキツネザル
レミュールパークでは、白と黒の縞模様の尾が、まるで黒い輪が付いているように見えるワオキツネザルをはじめ、
横っ飛びジャンプの歩行でお馴染みのシファカ、大切そうにエサを持つしぐさが可愛らしいチャイロキツネザル、
大きな声をあげて鳴くインドリなど、数種類のサルたちが自由に暮らしている。
こちらから触れたりすることは出来ないが、エサを食べる姿などを間近で観察することが出来る。
本格的なサファリという感じではないが、動物たちと人間の間に、檻の境界線のない動物園という感じ。
また、敷地は6haと広大ながら、それぞれのサルたちが縄張りを持っているので、
園内でサルを見つけることはそれほど難しくない。
マダガスカルへの旅行でははずすことの出来ない動物たちとのふれあい。
短い滞在時間だったとしても、スケジュールに詰め込むことができ、
動物たちとのふれあいというテーマを叶えることが出来るお薦めのスポット。
【写真:左】振り向きざまのシファカ
【写真:中】縄張り争いの時は大声で鳴くものの、基本的にはダルそうなインドリ
【写真:右】それほど知られていないが、見れば一目惚れのチャイロキツネザル